ベネズエラ危機:政治、経済、社会、国際社会の対応

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Dec 11, 2025 0 read

はじめに:ベネズエラ危機の背景と政治的変遷

ベネズエラは過去10年間、民主主義の崩壊、深刻な経済危機、人道的危機、そして大規模な国外脱出という多層的な危機に直面しており、国際社会の大きな関心を集めています 1。本レポートは、チャベス政権からニコラス・マドゥーロ政権への移行期とその後の主要な政策決定、およびそれに対する国内外の反応を分析し、特に過去5年間(2019年以降)に焦点を当ててベネズエラの政治的変遷と現状を明らかにすることを目的としています 1

2019年1月10日、マドゥーロ大統領は2期目の「就任」を果たしました 1。これに対し、反チャベス派は2018年5月の大統領選挙は憲法違反で無効であると主張し、国会議長のフアン・グアイドが暫定大統領への就任を宣言しました 1。この結果、マドゥーロとグアイドという「ふたりの大統領」がそれぞれ正統性を主張する異常事態に陥り 1、国際社会は分裂した対応を見せました。米国、欧州連合(EU)、日本、カナダ、リマ・グループなど50カ国以上がグアイドを正統な大統領として承認した一方で、中国、ロシア、キューバ、イランなどはマドゥーロを支持しました 1

この状況はベネズエラ政治の混乱を象徴し、マドゥーロ政権は民主主義の後退と権威主義化を強めてきました 1。一方で、反チャベス派は内部対立や求心力の低下に苦しみ、グアイドの暫定大統領としての地位は2023年1月に失効しました 。本セクションでは、これらの複雑な背景と政治的変遷を概説することで、本レポート全体における詳細な議論の土台を築きます。

経済危機の要因と国民生活への影響

ベネズエラ経済は、かつて南米有数の豊かさを誇っていましたが、2014年以降、深刻なハイパーインフレーションと国民の購買力低下に苦しんでいます 2。この経済危機は、主に石油生産量の激減、国家介入型経済構造の変化、国際石油価格の下落、そして国際社会からの経済制裁といった複数の要因が複合的に絡み合って発生し、国民生活に壊滅的な影響を与えてきました。チャベス政権以来の政治的選択と経済政策が、この危機の土壌を作り上げたと言えます 3

1. 石油生産量の激減と経済構造への影響

ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇る国ですが 4、その生産量は近年劇的に減少しました。チャベス政権以前から生産縮小の兆候は見られましたが 3、2015年には日量265万バレルであったものが 2、2016年4月以降、国営石油会社PDVSAの財務悪化や支払い遅延によりサービス会社が撤退し、資機材や人材不足が深刻化したことで減少が加速しました 2

石油生産量の推移

生産量 (バレル/日) 備考
危機前 約270万 4
2015 265万 2
2018 151万 2
2019年3月 87万 米国制裁、大規模停電の影響 5
2020年6月 35万~36万 最低水準。米国制裁強化、輸出困難、貯蔵満杯による 2
2021年2月 50万超 一時的な回復 5
2021年12月末 100万 マドゥーロ大統領が目標達成と発表 2
2025年2月 89.2万 4

この生産量減少の背景には、PDVSAの経営不振、長年の投資不足、熟練労働者の国外流出、インフラの老朽化が挙げられます 4。特に2019年からの米国による石油禁輸措置は、決定的な打撃となりました 2。また、オリノコ川流域の超重質油は希釈剤を必要としますが、米国からのナフサ輸入停止やイランからのコンデンセート供給の不安定さも生産量抑制の一因です 5

ベネズエラの経済は輸出収入の90%以上を石油に依存する「レンティア経済」であったため 4、石油生産量の激減は経済全体に深刻な影響を与えました。

  • 外貨獲得源の喪失と財政悪化: 石油生産量の減少と米国による禁輸措置により、ベネズエラは主要な外貨獲得源を失いました 2。その結果、財政赤字は深刻化し、2018年にはGDPの31%にも達しました 2
  • 経済全体の縮小: 名目GDPは2012年の3,621億ドルから2019年には639億ドルへと約8割縮小しました 2。一人当たりGDPも同時期に約5分の1に縮小しています 2
  • 国内産業の脆弱化と輸入依存: チャベス・マドゥーロ両政権による価格統制、為替管理、企業の国有化といった国家介入型経済政策は、農業や製造業への投資を抑制し、国内生産を縮小させました 3。外貨不足は輸入品への依存を困難にし、結果として食料や医薬品の深刻な欠乏を招いています 3
  • 民間セクターの役割拡大とドル化: 経済危機を受け、政府は外貨管理制度の廃止、変動相場制への移行、価格統制の縮小といった規制緩和を進めました 2。これにより民間セクターの役割が拡大し、急速な経済のドル化が進行しました。2019年10月には主要7都市におけるドル決済比率が53.8%に達しています 2
  • 地政学的パートナーの再編: 米国による経済制裁により、ベネズエラは米国や欧州市場を失い、中国やロシア、イランといった国々が新たな主要経済パートナーとなりました 2。しかし、これらの国々への原油輸出は債務返済に充てられることも多く、必ずしも直接的な外貨収入には結びつきませんでした 2

2. ハイパーインフレーションの原因と国民生活への影響

ベネズエラのハイパーインフレーションは、複数の要因が絡み合って発生し、国民生活に壊滅的な影響を与えています。

ハイパーインフレーションの主要原因

  1. 際限なき財政肥大と貨幣増発: チャベス政権以来、大規模な財政支出による財政赤字が中央銀行による安易な貨幣増発で埋め合わせられ、通貨価値の急落を招きました 3
  2. 固定為替相場制の失敗: 2003年に導入された固定相場制は、国内通貨の過大評価を引き起こし、恒常的なインフレの原因となりました 2。外貨不足による通貨切り下げと資本逃避がインフレ期待を加速させました 6
  3. 国家介入型経済政策の失敗: 価格や為替レートの非現実的な固定、外貨統制、企業・農地の接収といった政策は、国内生産を抑制し、物資不足を深刻化させました 3
  4. 国際石油価格の下落: 2014年からの原油価格下落(シェールショック)は、石油輸出に依存するベネズエラ経済にとって壊滅的でした 3。2012年時点で外貨準備を使い果たしていたベネズエラは、国際収支の悪化により輸入を維持できなくなりました 6
  5. 米国による経済制裁: 2017年以降の米国の金融制裁、そして2019年からのPDVSAへの禁輸措置は、ベネズエラの外貨獲得能力をさらに阻害し、インフレを加速させる追加的な打撃となりました 2

ハイパーインフレーションは著しく進行し、2018年には年率63,000%を超え 4、2019年2月には344,510%を記録し 2、時期によっては年率50万~300万%に達したと推定されています 6

国民の購買力と生活水準への影響

  • 購買力の急激な喪失: 現地通貨ボリバルの価値が急速に失われ、国民の購買力は著しく低下しました。このため、2018年と2021年に2度のデノミが実施されています 2
  • 貧困の拡大: 国民の9割が貧困層とされ、公務員の平均月収が10~30ドル、民間企業でも約70ドルである一方、5人家族の最低必要金額は月250~350ドルに達しており、多くの国民は生活を維持できない状況にあります 2
  • 食料・医薬品の欠乏: 外貨不足による輸入困難と国内生産の低迷により、食料や医薬品が決定的に不足しています 3。国連の統計によると、乳児死亡率は2011年の14.3人から2017年には25.7人へと上昇し、栄養失調で命を落とす乳幼児も増加しています 3
  • 国民の国外流出: 経済の急速な悪化と治安の悪化により、総人口の1割以上にあたる700万人以上が国外に脱出する事態となっています 2
  • 生活防衛策の多様化: 多くの国民は、副業、海外からの送金(国民の4割が依存)、国連による人道支援、政府からの食料提供、そして経済のドル化を通じて、購買力低下に対処しています 2
  • インフラの崩壊と人道危機: 電力部門への投資・メンテナンス不足による大規模停電が頻発し、病院では医療器具が使用できず、透析患者や新生児が命を落とす事故が発生しています 3。マドゥーロ政権が当初人道危機を認めず、海外からの支援物資の受け入れを拒否したため、状況はさらに悪化しました 3

ベネズエラの経済危機は、国家介入主義的な経済政策の失敗、石油依存という経済の脆弱性、政治的混乱、そして外部からの経済制裁が複合的に作用した結果であり、国民生活に壊滅的な影響を与え続けています 3。これにより生じた広範な貧困、食料・医薬品の欠乏、インフラの崩壊は、深刻な社会・人道危機へと繋がり、国際社会からの緊急の支援を必要とする状況に陥っています。

社会・人道危機の実態

ベネズエラにおける歴史的な経済危機は、国内に深刻な社会・人道危機を引き起こし、大規模な人口移動へと繋がっています 7。この危機は、国内の医療・食料供給の不足、電力・水などのインフラ崩壊、そして国外への大規模な人口流出という形で、国民生活に壊滅的な影響を与えています。

国内の医療・食料供給と国民生活の現状

経済破綻は極度の貧困を深刻化させ、国民生活を脅かしています 8。貧困率は2013年の33%から2019〜2020年には96%へと急増し、国民の79%が極度の貧困状態にあり、約77%が1日1.9ドル未満で生活しています 。この結果、国内では食料や医薬品が極端に欠乏し、多くの子どもや高齢者が命を落とす事態となっています 7

推定940万人のベネズエラ人(人口のほぼ3分の1)が緊急の食料安全保障支援を必要としており、30%以上が栄養不足に陥っています 7。10世帯中8世帯が1日1食を確保するために大切な財産を費やさざるを得ない状況にあり、朝食を用意できないため子どもを学校に行かせられない家庭も存在します 9。障がいのある家族がいる家庭では家計が圧迫され、「薬か食べ物か、教育か食べ物か」という困難な選択を強いられています 9。国連WFPは2022年から障がいのある子ども、青少年、成人への学校給食支援を実施し、1万4,855人が給食を享受しています 9

現在、国民の4人に1人に相当する700万人が人道支援を必要としており、UNHCRは脆弱な立場にある270万人のベネズエラ人の支援を目指しています 7

インフラ崩壊の実態とその国民生活への影響

経済破綻は生活環境の悪化と、医療をはじめとする基本的なサービスの停止を招きました 7。特に首都カラカス以外では国の機能が縮小し、医療インフラは崩壊状態にあります 。道路網の崩壊とガソリン不足は、農業地域が自給自足の農業に頼らざるを得ない状況を生み出しています 7。また、国民は十分な水や電気へのアクセスが困難な状態に置かれています 8。UNHCRは、2025年を通じて医療センターやコミュニティ・センターの改修、シェルターの提供といった事業を拡充する計画を立てています 7

移民・難民の流出規模と周辺国への影響

ベネズエラは、非紛争国としては世界最大の人口流出を経験しています 7。政情不安と社会経済の混乱、食料や医薬品の不足、人道危機により、ベネズエラ人の4人に1人に相当する790万人近くが故郷を追われました(2025年5月現在) 。これは南米最大の難民危機とされています 10

国外へ移動を強いられたベネズエラ人の数は、2013年までは1万人未満でしたが、2014年に1万人を突破し、2018年には300万人超に急増しました 8。その後も大規模な流出が続き、2019年には450万人弱、2020年には500万人弱となり、2020年末時点での合計は約488万人です 8。2025年5月時点では、約687万人がコロンビアをはじめとする周辺国で避難生活を送っています 7。2018年には毎日5,000人ものベネズエラ人が近隣諸国へ渡っていました 10。周辺国への出国が絶えない一方で、政府発表によると過去数年間で帰還者は100万人以上に上るとされています(未確認情報) 7。また、アメリカなどからの強制送還者も増えています 7

現在、約670万人以上が南米とカリブ諸国で受け入れられており 10、コロンビアが281万人と最大の受け入れ国となっています 7。2020年末時点で10万人以上のベネズエラ人を受け入れている国は以下の通りです 8

受け入れ国 受け入れ人数 総数に占める割合
コロンビア 1,749,895人 35.83%
ペルー 1,049,970人 21.50%
チリ 457,324人 9.36%
エクアドル 415,835人 8.52%
ブラジル 301,363人 6.17%
アルゼンチン 175,797人 3.60%
アメリカ 146,959人 3.01%
パナマ 121,598人 2.49%
ドミニカ共和国 114,325人 2.34%
メキシコ 102,223人 2.09%

避難者は、武装グループや盗賊からの搾取・虐待、性暴力、差別、排外などにさらされる危険性があります 10。何十万人ものベネズエラ人が正式な書類や法的許可がなく、社会的セーフティネットを受けられない非常に脆弱な立場に置かれています 10。避難の旅は命がけであり、コロンビアとパナマの間にあるダリエン地峡のような危険なジャングルを横断する人々も増加しています 10。避難民は飢餓、医療の欠如、政情不安、脅迫、恐怖を抱えています 10。ブラジル南部で発生した大規模洪水では、約4万1,000人のベネズエラ人難民も被災するなど、異常気象も難民と受け入れコミュニティに大きな影響を及ぼしています 10

国際機関やNGOは、これらの避難者への支援活動を展開しています。UNHCRは、国境での保護活動強化(特に保護者のいない子どもや家族とはぐれた子どもの保護)、感染症予防のための衛生用品提供、緊急宿泊所や避難所の提供、受け入れ各国政府と協力した法的書類処理の迅速化や職業斡旋などの自立支援、南半球の冬に備えた防寒支援(毛布、暖房器具、燃料、防寒着購入のための現金給付)などを実施しています 10。UNHCRの支援により、周辺国で暮らすベネズエラ人の68%が合法的な滞在資格を取得したものの、依然として約230万人が就業や必要不可欠なサービスへのアクセスで困難に直面しています 7。ワールド・ビジョンは、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーなどに逃れたベネズエラ人に対し、食料や水の供給、保健衛生分野の取り組み、子どもの保護など多岐にわたる支援を行い、一時休憩所や「チャイルド・フレンドリー・スペース」も設置しています 8

しかし、ベネズエラの人道危機は「忘れられた危機」となっており、難民への援助を継続するための活動資金が恒常的に大きく不足しているという課題があります 10。UNHCRは資金不足から、ベネズエラ国内に配置する人員数と活動規模の縮小を余儀なくされています 7

国際社会の対応と関与

ベネズエラの多層的な危機に対し、国際社会は多様な対応と関与を示しています。民主主義の後退、権威主義化、そして著しい人権侵害に対して強い懸念が表明されてきました 1

主要国・地域の政治的立場と米国の経済制裁

主要な国際アクターは、ベネズエラの政治状況に対して異なる立場を取っています。

1. マドゥーロ政権非難と経済制裁の陣営

米国、EU、カナダ、および一部の南米諸国は、ニコラス・マドゥーロ政権を非難し、経済制裁を課してきました 。国際刑事裁判所(ICC)は、マドゥーロに対する人道的犯罪の責任者としての刑事捜査を開始しています 1

  • 米国: 2019年以降、米国はマドゥーロ政権の転覆を目指し、「最大圧力」戦略を展開してきました 。ベネズエラ政府や国営石油会社PDVSAへの包括的な制裁や、フアン・グアイド暫定大統領の承認を進め、さらに軍事介入の可能性を示唆する「いかなる選択肢も排除しない」との姿勢を見せました 。トランプ政権は、麻薬カルテルを「武力紛争の敵対勢力」と位置づけ、マドゥーロ政権転覆も視野に入れた軍事行動の法的根拠を拡張しようとしました 11。2020年にはマドゥーロを含むチャベス派幹部15人を国際テロ支援や麻薬取引、汚職などで刑事訴追し、情報提供者に報奨金をかけています 12。2019年からの米国による石油禁輸措置は、ベネズエラの外貨獲得能力に決定的な打撃を与え、経済悪化とインフレを加速させました 。 しかし、ノルウェーなどが仲介した2023年10月のバルバドス合意(大統領選の実施、国際監視団の受け入れなど)を受けて、米国財務省はベネズエラの石油・天然ガス・金の取引に対する制裁措置を一時的に解除しました 。これは反チャベス派候補者の公職追放解除や政治犯の釈放が条件でしたが、2024年1月に最高裁がマリア・コリナ・マチャドに対する公職追放措置の維持を決定したため、米国は同年10月に解除した経済制裁の一部を再び強化する動きを見せています 1。2022年のウクライナ侵攻に伴う原油価格高騰を受け、米国はベネズエラ産原油の禁輸措置緩和の可能性も示唆し、マドゥーロ政権と野党連合の対話再開を理由に、シェブロンにベネズエラでの操業を限定的に許可しました 13。2024年の大統領選挙結果に対しては、米国、ペルー、アルゼンチン、米州機構などがマドゥーロの勝利を認めず、ブラジルのルーラ大統領も再選挙を提案しています 13

2. マドゥーロ政権支持の陣営

中国、ロシア、キューバ、イランなどはマドゥーロを支持し、国連安全保障理事会で米国が提案したマドゥーロ政権非難決議案に拒否権を発動してきました 。これらの国々は、ベネズエラの石油産業への投資や武器輸出を通じて関係を強化し、米国からの経済制裁に対抗するため、イランからのガソリン供給、中国・ロシアとの石油開発や武器供与で連携しています 。2022年のロシアによるウクライナ侵攻においては、ベネズエラは一貫してロシアを支持しました 13。中国とロシアは、ベネズエラの経済危機により新規融資には慎重な姿勢を見せる一方で、人道支援物資の提供やワクチン供給も行っています 12

3. 対話仲介

ノルウェーをはじめとする諸外国は、チャベス派と反チャベス派の対話を仲介し、2023年10月には大統領選に関する合意がバルバドスで達成されました 。

国連機関・主要NGOによる人道支援活動

ベネズエラ国内および周辺地域における人道危機に対し、国連機関や国際NGOが支援活動を展開しています。しかし、「忘れられた危機」と呼ばれるほど、活動資金の不足という深刻な課題を抱えています 10

  • UNHCR(国連難民高等弁務官事務所): UNHCRは、脆弱な立場にあるベネズエラ人270万人を支援対象としています 7。周辺国で避難生活を送るベネズエラ人に対しては、国境での保護活動強化(特に保護者のいない子どもや家族とはぐれた子どもの保護)、感染症予防のための衛生用品提供、緊急宿泊所や避難所の提供を行っています 10。また、受け入れ各国政府と協力して法的書類処理の迅速化や職業斡旋などの自立支援、南半球の冬に備えた防寒支援(毛布、暖房器具、燃料、防寒着購入のための現金給付)も実施しています 10。その結果、周辺国で暮らすベネズエラ人の68%が合法的な滞在資格を取得したものの、約230万人が就業や必要不可欠なサービスへのアクセスで依然困難に直面しています 7。 ベネズエラ国内でも、UNHCRは他の国連機関やNGO、民間セクターとの連携を促進し、医療センターやコミュニティ・センターの改修、シェルターの提供、帰還者への職業訓練などを2025年を通じて拡充する計画です 7。しかし、資金不足のため、ベネズエラ国内に配置する人員数と活動規模の縮小を余儀なくされています 。

  • 国連WFP(世界食糧計画): 国連WFPは2022年から、ベネズエラ国内の障がいのある子ども、青少年、成人への学校給食支援を実施しており、これにより1万4,855人が給食を享受しています 9

  • ワールド・ビジョン: ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーなどに逃れたベネズエラ人に対し、食料や水の供給、保健衛生分野の取り組み、子どもの保護など多岐にわたる支援を行っています 8。避難する人々のために高速道路沿いに一時休憩所や滞在場所を設置し、マットレス、衛生キット、食料キットを提供しているほか、子どもたちが遊び、学び、社会心理的ケアを受けられる「チャイルド・フレンドリー・スペース」も設置しています 8

周辺国による移民・難民の受け入れと課題

政情不安と社会経済の混乱、食料や医薬品の不足、人道危機により、ベネズエラ人の4人に1人に当たる790万人近くが故郷を追われました(2025年5月現在) 。これは南米最大の難民危機とされています 10

1. 受け入れ状況

約670万人以上が南米とカリブ諸国で受け入れられており 10、コロンビアが最大の受け入れ国であり、281万人を受け入れています 7。2020年末時点で10万人以上のベネズエラ人を受け入れている国は以下の通りです 8

受け入れ国 受け入れ人数 総数に占める割合
コロンビア 1,749,895人 35.83%
ペルー 1,049,970人 21.50%
チリ 457,324人 9.36%
エクアドル 415,835人 8.52%
ブラジル 301,363人 6.17%
アルゼンチン 175,797人 3.60%
アメリカ 146,959人 3.01%
パナマ 121,598人 2.49%
ドミニカ共和国 114,325人 2.34%
メキシコ 102,223人 2.09%

2. 避難者が直面する課題

避難者は、武装グループや盗賊からの搾取・虐待、性暴力、差別、排外などにさらされる危険性があります 10。何十万人ものベネズエラ人が正式な書類や法的許可を持たないため、社会的セーフティネットを受けられない非常に脆弱な立場に置かれています 10。避難の旅自体も命がけであり、コロンビアとパナマの間にあるダリエン地峡のような危険なジャングルを横断する人々も増加しています 10。彼らは飢餓、医療の欠如、政情不安、脅迫、恐怖を抱えています 10。また、ブラジル南部で発生した大規模洪水のように、異常気象が難民と受け入れコミュニティに大きな影響を及ぼす事例も報告されています 10

国際社会の監視と介入は強まっているものの、ベネズエラ政治の混迷は国際的要因と深く絡み合いながら、引き続き不安定な状況が続くと予想されます 1

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